バセドウ病とは
自身の細胞を刺激してしまうタンパク質/自己抗体により甲状腺の細胞の増殖と甲状腺ホルモン合成が亢進する臓器特異的な自己免疫疾患です。甲状腺とは首の前方、喉仏の下に位置する内分泌腺です。甲状腺ホルモンは発達・分化や、代謝、ホメオスタシスの維持といった多彩で重要な効果をもたらします。バセドウ病では通常、甲状腺ホルモンの機能が亢進し、多様な症状をきたします。好発年齢は20-30歳代で、男女比は1 : 4と女性に多い病気です。
症状
症状は大きく、甲状腺の腫大、甲状腺ホルモンの機能亢進に伴う症状、眼の症状に分けられます。
甲状腺の腫大は一般的にびまん性です。若年女性では見つけられやすいですが、男性では女性より甲状腺が下方にあること、周囲の筋肉が発達していることからわかりにくいことがあります。また、高齢の方では甲状腺が小さく、わからないこともあります。
甲状腺ホルモンの機能亢進に伴う症状には動悸、息切れ、発汗、体重の減少、手指のふるえ、四肢の脱力などがあります。
眼の症状には眼が突出する、まぶたが腫れる、ものが二重に見える、視力の低下などがあります。
診断
診断は血液検査、超音波検査、シンチグラフィ検査で行います。血液検査で甲状腺ホルモンの上昇、甲状腺刺激ホルモンの低下、自己抗体の陽性を確認します。超音波検査では甲状腺の腫大、甲状腺への血流の増加を確認します。シンチグラフィとは、放射性物質を体内に投与し、放出された放射線を検出、その分布を画像化したものです。甲状腺に対してはヨウ素やテクネシウムを用います。両者とも、甲状腺の機能を画像的に反映します。バセドウ病ではびまん性に取り込みを認めます。
治療
治療には薬物療法、アイソトープ療法、手術療法の3つがあります。日本では薬物療法が第1選択になることが多く、外来ですぐ治療をはじめられることがメリットです。しかし、細菌と戦う白血球の数が極端に減る無顆粒球症などの重症な副作用が起きる可能性があります。また、再発も少なくありません。一方で、アイソトープ療法は甲状腺に集積する放射性物質を投与することで、甲状腺を破壊し、機能を低下させます。カプセルを飲むだけの治療ですが、その前後でシンチグラフィの検査や、日常生活上の留意点があります。また、1回の治療で効果が不十分なことがあり、複数回治療を要することもあります。一方で甲状腺の機能が下がりすぎてしまい、低下症になることもあります。手術療法は甲状腺を外科的に切除する方法です。
当院ではそれぞれ、放射線科、外科と連携し、すべての治療方法が選択可能です。