Fabry病をご存じですか?
皮膚科ではアトピー性皮膚炎、乾癬、帯状疱疹、蜂窩織炎、皮膚腫瘍など皮膚疾患全般に対応しています。その中で長期にわたり複数家計・複数例の治療経験を持つFabry病について今回はお話ししたいと思います。当院は皮膚科においてFabry病の複数例の治療経験を持つ全国でも数少ない施設の一つです。Fabry病はX連鎖性の遺伝性糖質代謝異常症です。リソソーム内のαーガラクトシダーゼA活性(α-GAL)が先天的に欠損または低下し、グロボトリアオシルセラミド(GL-3)が腎臓、心臓、血管組織を中心に広汎に蓄積し、種々の症状をおこします。発症率は日本人の7000人に1人くらいです。肥大型心筋症の0~11.8%、透析患者の0~3.4%、若年性脳卒中の2.4~4.9%はFabry病によると報告されています。
臨床症状は、古典型では幼児期には四肢仏痛発作や乏汗症や発熱が見られます。徐々に腰背部を中心に多数の被角血管腫を生じ、進行性の腎障害、心肥大、脳血管障害など多彩な症状を呈します。さらに腎不全、心不全、脳血管障害などにより40歳前後で死にいたることもあります。難聴や眼症状の角膜混濁が見られることもあります。遅発型は軽症型で成人になってから発症し、腎、心に限局した症状を呈します。女性ヘテロ型は症状のないものから古典型の症状まで様々です。検査所見はα-ガラクトシダーゼ(GLA)活性低下が特徴です。
皮膚、心臓、腎臓などの組織の電顕像で血管内皮細胞のリソソーム内に電子度の密な層板状構造物(zebra bodies)を多数認めます。
治療は酵素補充療法と薬理学的シャペロン療法があります。酵素補充療法は2週間に1回点滴をします。すべての症例に有効です。薬理学的シャペロン療法は内服治療ですが特定の遺伝子変異にのみ有効です。
いろいろな臓器に症状が出るので定期的にそれぞれの科でのフォローが必要になります。
診断には問診が最も重要になります。小児期から生じる症状(手足の痛み、汗が出ないなど)の有無について聞いてください。体幹や手の被角血管腫があるか確認してください。
早期診断・早期治療により合併症なく過ごすことができます。診断までに10年以上かかる例も多いので、疑われる場合は速やかに紹介をお願いします。