大切なのは“思考”を伝えること。患者の安全を担保しつつ研修医の成長を促せる指導を
“型”で学ぶことで、1年目から適切な処置が可能に
研修医の指導では、患者さんの安全と研修医の成長、この2つのバランスを保てるようにしています。研修医の成長のためにいきなり「やってみろ」では、患者さんの安全を犠牲にしかねません。かと言って、指導医が頭の中で答えを出しそれを指示するだけでは研修医は育ちません。むしろ私はウザい指導医でいると言うか…。「どうしたらいいと思う?なんで?根拠は?はい不合格」みたいな(笑)。
例えば低血糖の患者さんが来た場合、指導医がカルテを一通り見て低血糖を治療し「帰していいよ」では、なぜ帰して良いのか、どんな時は駄目なのか、研修医には伝わりません。大切なのは“思考”を伝えること。まずは目の前の低血糖を治療。次に、用いている薬によっては24時間経過観察。それ以外であれば、そこに至る誘因がなかったかを問診・診察したのち帰す。このように、思考を言語化してパターンごとの“型”にして伝えることで、次に同じ症状の患者さんが来た時には1年目の研修医でも適切な処置ができるようになるんですよね。これが「ベッドサイド5分間ティーチング」です。そして言語化することにより、屋根瓦方式で次に伝えることができます。私が後期研修医に教え、後期研修医が初期研修医に教える。そう、Teaching is learning twice―。後期研修医にとってもトレーニングになります。
そういう意味で執筆の機会も多く与えるようにしています。西部病院の症例をもとにした依頼原稿は後期研修医と分担執筆しています。また、救急関東地方会などで定期的に症例報告もしており、それらの準備も良い経験になっているようです。